惻隠之羽~華胥夜話

sokuin no hane ~kasyoyawa 2024.7

レジン・パール顔料・純銀箔粉等

size:1000×540


わたしの作品は「華胥(かしょ)」という理想郷が舞台です
華胥においては全てが自然のままで、為政者はなく、人々に欲望もない平和な場所と伝えられ、中国の黄帝が夢で華胥を訪れ国づくりの手本としたことで知られています。
しかし現代社会の人類のありようは華胥の国とはあまりに遠く、生き物たちの姿を通して美しく平和な華胥の国を表現しています。

『惻隠の羽〜華胥夜話(そくいんのはね~かしょやわ)』は「自分を生きること」をテーマにした作品です。
黒孔雀を作りたいと思い、なにか言い伝えはないかと調べてみると「くじゃくのはなび」という物語を見つけました。※下部に要約あり
わたしは、すべての羽を抜いて困っている人を助けたちびクロの物語は自己犠牲をして他に尽くすことを推奨する教えではなく、生まれ持っているものを他のために役立て、そのことが喜びとなること、それが天女にも認められる「優れた者」であると受け取りました。

ハリボテのようななにかを持つことをすごいと勘違いしたり、どうせ自分なんてと卑下し、ないものねだりで人を羨んだりしてばかりでは、本来自分に備わったものを見失ってしまいます。
自分を明らめないその状態こそが自己犠牲ではないかと思うのです。

物語のちびクロはボロボロの黒い羽の小さな孔雀とされていますが、自分を生きることに目覚めた内面からの美しさを作品の黒孔雀には投影しました。
黒孔雀が花火のように光り輝く姿を想い浮かべながら、私欲に惑わされて自己犠牲することなく、自分という存在をどう他のために使うのかに思いを馳せてもらえたら嬉しく思います。

くじゃくのはなび【要約】

とある森に住む孔雀たちが、その森を守る天女に魔法を教えほしいと願い出ると、天女はその森の中で最も優れた者を弟子にすると言いました。
天女との約束の時間に向けて、身綺麗にして自分こそはと自信満々な美しい孔雀たちの中で、ちびクロと呼ばれる黒い小さな孔雀は、自分の姿を川の水に写し、自分には関係ない話だとその場を飛び去ります。

ちびクロは行く先々の道中で病に苦しむ人や困っている人と出会い、自分の羽によって人々を助けていき、そのたびに心が温かくなるのを感じますが、花火が見たいと願う病に苦しむ女の子を助けられずにがっかりして森に帰ることとなります。
ちびクロはその頃には自分の羽を人々のために使い尽くし飛ぶこともできず丸裸で、仲間たちにその姿を笑われましたが、天女は物陰に隠れていたちびクロを弟子にするといい抱き上げました。
すると七色に輝く羽が生え、女の子の元に飛んで行くとちびクロの羽はまるで花火の様に美しく光り輝いたのでした